はじめに
低体温症は雪山だけの危険ではありません。夏山でも風雨にさらされることで起こります。前兆は山の天気が急変する前兆と撤退の判断、落雷は山の落雷の危険と避難のしかた、沢の増水は山の大雨による沢・登山道の増水の危険にそれぞれ譲り、ここでは低体温症の予防に絞って解説します。
低体温症の起こり方
福井県「山岳遭難防止マニュアル」は、春や秋の高山では気温が低下すると雨はみぞれに変わることがあり、身体が雨に濡れてみぞれと風にさらされると急激に大量の体熱を奪われるとしています。体熱を奪われ、体温が低下し短時間のうちに体が動かなくなり、低体温症や疲労凍死の危険があります。山岳遭難対策中央協議会は、低体温症は夏山でも風雨にさらされることで起こるとしています。
撤退の判断基準(シリーズ共通)
前兆に気づいてから迷わず動けるよう、次をシリーズ共通の基準としています。
- 出発前: 山域の市町村に大雨・暴風などの警報以上が出ていれば、中止・延期する
- 雷注意報が出ている日は、稜線・山頂を早い時間に抜けて行動を終える計画にし、それができなければ計画を変える
- 行動中に雷鳴が聞こえた・積乱雲が近づくサインがあったら、様子を見ずに直ちに稜線・山頂から離れて下る
- 沢沿いを歩く日は、大雨注意報が出ていれば沢沿いの区間を避ける計画にする。行動中に雨が降り出したら沢から離れ、水位の上昇や濁りに気づいたら渡らず、引き返すか、沢から離れて水が引くのを待つ
- 体が冷えて震えが止まらない、受け答えがおかしいなどのサインがあれば、自力で下ることにこだわらず救助要請する
この基準はシリーズの編集方針です(出典の記載ではありません)。
栃木県のハンドブックも、熱中症も低体温症も意識がいつも通りでない時は、早急に救助要請するとしています。
基準5のサインが出る前の、初期の震え(悪寒)段階での対処は、この後の「リスクと備え」で扱います。
装備リスト
北海道 総務部危機対策局危機対策課は、非常時のことを想定した雨具・防寒着を装備するよう呼びかけています。
必携装備(編集部の推奨)
- レインウェア上下(防水透湿素材)
- 防寒着(フリース・薄手の中綿ウェアなど)
- 替えの靴下・グローブ(予備)
- 温かい飲み物(保温ボトル)と行動食
- ツェルトまたは非常用のビバークシート
季節・標高で追加する装備(編集部の推奨)
- 秋冬・稜線: 保温力の高いミッドレイヤー、防寒手袋・ニット帽
予防の実践(レイヤリングと行動の工夫、編集部の提案)
1. 行動前
出発前に山の天気の調べ方を参考に天気予報と気温を確認しましょう。
2. 行動中
ベンチレーション調整などで衣類の濡れを溜め込まないようにし、休憩の前に上着を一枚羽織ってから止まる順番を習慣にしましょう。
3. 濡れ・風を感じたら
雨具の中まで濡れた、風で急に寒気を感じたら、風を避けられる場所へ早めに移動するとよいでしょう。予定のペースを守ろうとせず、行動を切り上げる判断を早めに行いましょう。福井県のマニュアルも、早々に行動を変更して安全な場所へ引き返す、ツェルトをかぶる、森林地帯へ降りるなどを対策として挙げています。
リスクと備え
栃木県のハンドブックは、低体温症の最初は「震え」の症状が現れるとしています。国立登山研修所のテキストは、震えが低下する、あるいは意識が正常でないときは中度以上で、一気に悪化することがあるとしています。震えが収まっても回復とは限りません(編集方針)。山岳遭難対策中央協議会のセーフティーカードは、この段階のうちに、温かい飲み物を飲ませ、濡れた衣類から乾いた衣類に着替えさせ、暖かい場所に移動させるとしています。シリーズ共通の基準5のとおり、震えが止まらない、受け答えがおかしいといったサインが出たら、自力で下ることにこだわらず直ちに救助要請してください。下山後も体調が戻らない、不安が残るときは受診してください(編集方針)。ほかのリスクとサインは山の天気が急変する前兆と撤退の判断・山の落雷の危険と避難のしかた・山の大雨による沢・登山道の増水の危険で確認してください。
地図・登山届
地形図やGPSアプリなどで現在地を確認しながら行動しましょう(編集方針)。登山計画は必ず立て、登山届を提出しましょう(山岳遭難対策中央協議会「山岳遭難セーフティーカード」)。県ごとの届出の決まりは山の天気が急変する前兆と撤退の判断の「地図・登山届」も参照してください。提出先・様式は事前に確認して控えを携行し、上記の撤退基準を含む行程を家族と共有しましょう(編集方針)。
チェックリスト(保存・印刷可、編集部の提案を含む)
- ☐ 標高の高い山では防寒着を多めに用意した
- ☐ 防水透湿のレインウェア上下を携行している
- ☐ 替えの靴下・インナーを用意した
- ☐ 立ち止まる直前に一枚羽織る習慣を意識している
- ☐ ツェルトや非常用ビバークシートを携行している
- ☐ 震え(悪寒)に気づいたら初期対応をとり、震えが止まらない、受け答えがおかしいなどのサインがあれば、自力で下ることにこだわらず救助要請すると決めている
- ☐ 登山計画書(登山届)を提出し、上記の撤退基準を含む行程を家族と共有した
よくある失敗と対策(編集部の提案を含む)
- 「夏だから」と防寒着を持たずに出発する: 低体温症は夏山でも風雨で起こるため、携行する
- 濡れたまま行動を続け、休憩で一気に冷える: 一枚羽織る習慣にする
- 震えなどの初期サインを「大丈夫」とやり過ごす: 気づいた時点で初期対応をとり、震えが止まらない・受け答えがおかしいなどのサインが出たら救助要請する
まとめ
低体温症は、風雨にさらされることで、雪山に限らず夏山でも起こります。雨具と防寒着を携行し、立ち止まる直前に一枚羽織る習慣を意識するとよいでしょう。震えに気づいたら初期対応をとり、震えが止まらない・受け答えがおかしいときは速やかに救助要請しましょう。
次の一歩: レインウェアの選び方はザック・レインウェアの選び方で確認しておきましょう。
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出典
- 福井県「山岳遭難防止マニュアル」(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-24)
- 栃木県「高校生と指導者のための安全登山ハンドブック」(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-24)
- 北海道 総務部危機対策局危機対策課「夏山登山における山岳遭難事故に注意」(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-24)
- 山岳遭難対策中央協議会「山岳遭難セーフティーカード」(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-24)
- 国立登山研修所「高等学校登山指導者用テキスト」第7章 登山の医学(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-24)

