はじめに
「息を止めて水中にもぐる素潜り、シュノーケリングと何が違うの?」「耳が痛くならないか心配」——スキンダイビングに興味を持った人がまず迷うのはこの2点です。スキンダイビングは、水面移動が中心のシュノーケリングとは違い、息をこらえて水中へ潜降する分、体への負担も注意点も一段増えます。
この記事では、シュノーケリングとの違いを踏まえた上で、呼吸の整え方・耳抜き・水中での姿勢と動きという素潜り特有の技術と、浅場から始める練習の進め方を中心にまとめます。安全面はすべて海上保安庁の一次情報にもとづきます。
スキンダイビングの基本(シュノーケリングとの違い)
海上保安庁のウォーターセーフティガイドでは、水中マスク・スノーケル・フィン・ライフジャケット等の浮力体を身に付け、水面での浮力を確保しながら常時スノーケルで呼吸を続ける活動を「スノーケリング」と定義しています。これに対し、浮力体を用いずに潜水する行為は「スキンダイビング」に分類され、スキンダイビングを行うには、スノーケリングで十分に経験を積み、海での知識・技術を身に付けることが必要とされています(海上保安庁 ウォーターセーフティガイド スノーケリング)。
つまりスキンダイビングは「水面で呼吸を続けるシュノーケリング」の先にある活動で、息を止めて潜る分だけ、耳抜きや呼吸の整え方といった専用の技術と、より慎重な安全管理が求められます。
必要な道具・装備
基本の装備はシュノーケリングと共通です。マスク・スノーケル・フィンに加え、浮力を確保するライフジャケット等の浮力体、体温低下や日焼けを防ぐウェットスーツやラッシュガードを用意します(各アイテムの選び方はマスク・スノーケル・フィン・ウェットスーツの選び方を参照)。単独で行わないことが前提のため、合図をそろえられるバディ(同行者)の存在も、道具と同じく欠かせない準備の一つです。休憩や目印になるフロートも用意すると安心です。
実践の手順(呼吸・耳抜き・姿勢の基本)
1. 呼吸を整える
潜る前に大きく呼吸を繰り返す「ハイパーベンチレーション」は、体内の酸素が足りているという誤った感覚を生み、水中で意識を失う「シャローウォーターブラックアウト」につながる危険な行為です。「スノーケリングガイド基準」は、ハイパーベンチレーションとシャローウォーターブラックアウトを、指導者が習得すべき必須知識の一つと位置付けています(スノーケリングガイド基準)。潜る前は普段どおりの呼吸を数回整える程度にとどめ、無理な息こらえで潜行時間を延ばそうとしないことが基本です。
2. 耳抜き
潜降すると水圧が上昇し、耳の奥に圧迫感が生じます。同基準は、水圧が人体に与える影響とその対処法にあたる「水中生理学」を必須知識としており、痛みを我慢して潜り続けず、圧迫感を覚えた時点で耳抜きを行い、それでも抜けないときは潜降を中止することが基本の考え方です。
3. 水中での姿勢と動き
海上保安庁のリーフレットは、フィンキックについて「力を抜いてリラックスし、膝を曲げずに足の付け根から大きく動かして蹴る」動作を基本として説明しています。また水中での姿勢を変える際は「うつ伏せ状態から身体を捻らせ、立ち上がったりフィンを履いたまま歩いたりする」動きが紹介されています(安全なスノーケリングの楽しみ方)。潜降時も同じく、力を抜いた姿勢と大きなフィンキックを意識すると、体力の消耗を抑えられます。
練習の進め方
「スノーケリングガイド基準」は、マスククリア・スノーケルクリア・フィンキック・スノーケリング姿勢・セルフレスキュー等の技術は、足がつく浅場で練習を行うことと定めています。スキンダイビングもこの考え方を踏襲し、まず浅場で呼吸・耳抜き・フィンキックを一つずつ確認してから、少しずつ潜降の深さを伸ばすのが安全な進め方です。自己流でいきなり深く潜ろうとせず、段階を踏むことが上達の近道です。
時期とポイント
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 季節 | 夏を中心に、水温が高く波の穏やかな時期 |
| 時間帯 | 風・波が穏やかで視界のよい午前中が中心 |
| 場所 | 監視員・ライフセーバーがいて遊泳区域が示された浅場 |
| 練習段階 | 足がつく浅場で呼吸・耳抜き・姿勢を確認してから潜降を延ばす |
季節や海況、遊泳可否は地域・施設で大きく異なります。釣行・遊泳先の最新情報や監視員の案内を必ず確認してください。
安全とルール
海上保安庁の統計によれば、スノーケル使用中の事故は他のマリンレジャーと比較しても死亡・行方不明となる割合が高いとされています(具体的な事故者数の推移はマスク・スノーケル・フィン・ウェットスーツの選び方にまとめています。出典: 海上保安庁 ウォーターセーフティガイド スノーケリング)。
スキンダイビングは息を止めて潜る分、シャローウォーターブラックアウト(浅い水深での意識消失)のリスクがシュノーケリング以上に高まります。以下は必ず守ってください。
- 単独では絶対に潜らず、常にバディと行動し、互いの様子を見守る。
- ハイパーベンチレーション(潜水前の過呼吸)を行わない。
- 圧迫感や苦しさを感じたら無理をせず、耳抜きが抜けないときは潜降を中止する。
- 監視員・ライフセーバーがいて遊泳区域の示された浅場で、段階的に練習する。
- 天候・波・体調がすぐれない日は潜らない。
チェックリスト(保存・印刷可)
- ☐ シュノーケリングの経験を十分に積んでから挑戦する
- ☐ バディ(同行者)と一緒に行動する
- ☐ 監視員のいる遊泳区域で、浅場から練習を始める
- ☐ 潜る前にハイパーベンチレーション(過呼吸)をしない
- ☐ 圧迫感を覚えたら早めに耳抜きをする
- ☐ 力を抜いたフィンキックと姿勢を確認する
- ☐ 天候・波・体調を確認し、無理をしない
よくある失敗と対策
- 潜行時間を延ばそうと過呼吸してから潜る: ハイパーベンチレーションはシャローウォーターブラックアウトの危険につながるため行わない。普段どおりの呼吸で潜る。
- 耳抜きを我慢して潜り続ける: 圧迫感を覚えた時点で耳抜きを行い、抜けなければ潜降を中止する。
- いきなり深く潜ろうとする: 浅場で呼吸・耳抜き・フィンキックを確認してから、少しずつ深さを伸ばす。
まとめ
スキンダイビングは、シュノーケリングで水面に慣れた先にある活動で、呼吸の整え方・耳抜き・力を抜いた姿勢と動きという専用の技術が要になります。ハイパーベンチレーションを避け、バディと共に浅場から段階的に練習することが、シャローウォーターブラックアウトを防ぐ何よりの備えです。
次の一歩: まずはシュノーケリング入門で水面での呼吸と姿勢に十分慣れ、監視員のいる浅場でバディとともに耳抜きの練習から始めましょう。
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出典
- 海上保安庁×レジャーダイビング認定カード普及協議会・JMRA「スノーケリングガイド基準」(参照: 2023-09 / 最終確認: 2026-07-22)
- 海上保安庁 ウォーターセーフティガイド「スノーケリング」(参照: 2024-05 / 最終確認: 2026-07-22)
- 海上保安庁作成リーフレット「安全なスノーケリングの楽しみ方」(参照: 2024 / 最終確認: 2026-07-22)

