古い土に効く菌根菌・有用微生物・完熟堆肥の使い方と効果の目安

古い土に効く菌根菌・有用微生物・完熟堆肥の使い方と効果の目安 土づくり・肥料

はじめに

古い土の再生はふるい分けと消毒だけで終わりと思われがちですが、菌根菌・有用微生物・完熟堆肥の状態も育ちを左右します。「菌を使えば肥料いらず」「堆肥を混ぜれば病気にならない」という過度な期待は禁物です。公的研究機関の知見から効果と限界を整理します。再生手順は用土の再生手順、改良材は再生材・改良材で扱います。

基本(種類・成分・特徴)

土の中で働く主な生物・資材は3つです。

  • 菌根菌(AM菌): 根に共生しリン酸吸収を助ける糸状菌。宿主植物の栽培跡地に残ります。
  • 拮抗性微生物(トリコデルマ属菌など): 病原菌と拮抗して発病を抑える微生物。
  • 完熟堆肥: 有機物を分解しきった資材。未熟だと発酵ガスで根を傷める「ガス障害」の恐れがあります。

菌根菌・有用微生物・完熟堆肥の役割と使い方(目安)

| 資材・生物 | 主な役割 | 効果が期待できる条件 | 注意点 | |—|—|—|—| | 菌根菌(AM菌) | リン酸吸収を助ける | 宿主植物の栽培跡地 | 5割減は感染率40%以下で生育低下増 | | 拮抗微生物(トリコデルマ属菌) | 病原菌との拮抗で発病抑制 | 培土時処理(株当り1〜1.4g)で防除価60〜75 | 播種時処理は発芽阻害 | | 完熟堆肥 | 有機物補給・団粒形成 | 色・崩れ・水分・臭い・発熱・キノコ/雑草で確認 | 未熟だとガス障害 |

菌根菌によるリン酸削減効果とその条件

農研機構によると、コムギ・バレイショなどAM菌の宿主植物の栽培跡地でダイズを栽培する場合、リン酸施肥を現行基準から3割削減できます。削減量は地域・土壌で異なり、道央の火山性土で5kg、泥炭土で4kg、道東の火山性灰土で6kg(P2O5/10a)が目安です。対象は標準ダイズ収量240〜320kg/10a以下の圃場の知見で、収量水準が異なれば当てはまりません。5割減は感染率40%以下で生育低下が増えるため、3割が無難です。

拮抗微生物による病害抑制と限界

トリコデルマ属菌のような拮抗微生物は病原菌の増殖を抑える働きが報告されています。農研機構の試験では、トリコデルマ・ハルジアナムTH-2株をふすま培養し株当たり1〜1.4gを培土時に処理すると、ダイズ白絹病に未登録の化学殺菌剤フルトラニル水和剤に匹敵する防除価60〜75が確認されました。播種時の処理は発芽阻害の制約があり、市販資材も表示どおりに使うのが前提です。

完熟堆肥の見分け方

農林水産省の資料は統一基準はないとしつつ、①色(暗褐色〜黒色)、②崩壊性(指で崩れる)、③水分(握って滲む程度)、④臭い(アンモニア臭が残れば未熟)、⑤発酵温度(発熱が続けば未熟)、⑥キノコ・雑草の発生を目安として示しています。未熟堆肥はガス障害の恐れがあり、使う前に確かめます。

消毒と有用微生物の両立

名古屋大学の技術報告によると、太陽熱土壌消毒(7月下旬〜8月下旬に20〜30日間、湿らせた土をビニールで覆う方法)は地表下20cmでも40℃以上を長時間維持でき、有用微生物を残しつつ病原菌を減らせます。ただし効果は年の気温次第で、40℃以上の維持が同じ6日間でも発病なしの年と1ベッドで多発した年(95株中64株発病)の両方があり、日数だけで発病は予測できません。地温が低い年は土壌pHなど他条件も影響したとみられ、防除は保証されません。

選び方・使い分け

  • 前作が菌根菌の宿主植物なら、リン酸施肥を控えめにする余地があります。
  • 病気が出やすい土には拮抗微生物入り資材や太陽熱消毒を検討し、症状が強ければ再生材・改良材と併用します。
  • 堆肥は「完熟」表示があっても、色・臭い・崩れやすさを自分で確かめると安心です。

よくある失敗と対策

  • 未熟堆肥でガス障害が出る: 施用前に色・臭い・発熱を確認し、疑わしければ数週間おく。
  • 微生物資材で大幅な減肥を期待しすぎる: 効果は条件つき(宿主植物の跡地・一定の収量水準)で控えめに見積もる。
  • 播種時に微生物資材を使い発芽が悪くなる: 使用タイミングを製品表示どおりに守る。

チェックリスト(保存・印刷可)

  • ☐ 完熟堆肥かを色・崩れやすさ・水分・臭い・発熱で確認した
  • ☐ 前作が菌根菌の宿主植物(コムギ・バレイショ等)かを把握した
  • ☐ 微生物資材の使用タイミング(培土時/播種時)を製品表示で確認した
  • ☐ リン酸の減肥は3割程度を目安にし、大幅な減肥は避けた
  • ☐ 病気が出やすい土は太陽熱消毒や改良材の併用を検討した

まとめ

菌根菌・有用微生物・完熟堆肥は古い土の再生に有効ですが、いずれも「条件つきの効果」で肥料や消毒の代わりにはなりません。堆肥は見た目と臭いで確認し、リン酸削減は3割を目安に、拮抗微生物は使用タイミングを守るのが近道です。

次の一歩: 具体的な再生手順は用土の再生手順(ふるい・消毒・熱/寒処理)、改良材の使い分けは再生材・改良材(苦土石灰・完熟堆肥・リサイクル材)で確認してください。

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出典

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