はじめに
「ハザードマップは見たけれど、自分の家がどうなのか・どこへ逃げればいいのかまでは決めていない」——そんな方は多いはずです。地図の色を自分の行動に置きかえられなければ、いざというときに動けません。
この記事を読み終えるころには、ハザードマップを入手し、自宅の災害リスク(浸水・土砂・揺れやすさ)を読み取り、避難先と避難経路を家族で決めるところまで進められます。専門知識は不要で、スマートフォンと10分あれば最初の確認はできます。確認の結果「うちは大したことなさそう」と感じても、備えや避難は空振りで構いません。逃げること・早めに動くことを恥じず、平常時に「どうなったら・どこへ・どの道で逃げるか」を決めておくことが家族を守ります。
なぜ重要か(最新データ)
災害が起きてから「どこへ逃げるか」を調べる時間はありません。国も「自らの命は自らが守る」を基本に、事前にハザードマップで避難先・避難経路を確認しておくことを呼びかけています。
避難の合図となる「警戒レベル」も押さえましょう。市町村が出す避難情報は5段階で、警戒レベル3が「高齢者等避難」、警戒レベル4が「避難指示(危険な場所から全員避難)」、警戒レベル5が「緊急安全確保」です。警戒レベル5は命の危険が極めて高く、警戒レベル4までとは異なる段階とされるため、警戒レベル4までに必ず避難を終えるのが原則です(出典: 内閣府 避難情報に関するガイドライン)。なお警戒レベル3は高齢者だけの情報ではなく、避難に時間がかかる人(高齢者・子ども連れなど)が早めに動き始める合図です。以降はこの「警戒レベル3で動く」を基準に避難計画を考えます。
避難先にも種類があります。「指定緊急避難場所」は災害の危険から命を守るため緊急的に避難する場所、「指定避難所」は危険がなくなるまでの一時的な滞在施設で、役割が異なります(出典: 国土地理院)。まず向かうべきは指定緊急避難場所です。
本論:ハザードマップで確認する手順
1. ハザードマップを入手する(重ねる/わがまち)
国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」には2種類あります。「重ねるハザードマップ」は、洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報や地形分類(土地の成り立ち)を地図に自由に重ねられるツールで、住所入力や現在地検索で調べられます。「わがまちハザードマップ」は、市町村が法令に基づき作成・公開したハザードマップへのリンク集です(出典: 国土交通省 ハザードマップポータルサイト)。まずは「重ねる」で全国共通の見方を覚え、最終的な避難先や細かな区域は自治体の「わがまち」側で確認するのが確実です。
2. 自宅の「浸水」リスクを確認する
自宅の住所を入力し、洪水・高潮・津波などの浸水リスクを表示します。色の濃淡は想定浸水深を表し、凡例で「何メートルまで浸かりうるか」を読み取れます。深さによって、上の階へ逃げる「垂直避難」で足りるのか、早めに別の場所へ移る「立退き避難」が必要かが変わります。浸水が長く続く区域では在宅避難が難しい場合がある点も確認しましょう。
3. 自宅の「土砂災害」リスクを確認する
同じ地図で土砂災害のレイヤーを重ね、自宅や周辺がリスク区域に入っていないかを見ます。崖や急な斜面、谷の出口の近くは特に注意が必要です。土砂災害は前ぶれが分かりにくく避難に余裕がないため、リスク区域では警戒レベル3での行動を前提に計画します。
4. 自宅の「揺れやすさ・地形」を確認する
地形分類を見ると、自宅が低地・盛土・埋立地など、揺れやすさや液状化に関係する地形かどうかの手がかりが得られます。さらに詳しい揺れやすさや想定震度は、自治体や都道府県の地震ハザードマップ(「わがまち」からたどれます)で確認します。地形のクセが分かると、家具固定と水害対策のどちらを優先すべきかが見えてきます。
5. 避難先と避難経路を決める
災害の種類ごとに避難先を決めます。指定緊急避難場所は洪水・土砂災害・高潮・地震・津波・大規模な火事・内水氾濫・火山現象の8区分の災害種別ごとに指定され、ある災害に適した場所が別の災害には適さないこともあります。必ず「その災害に対応している指定緊急避難場所」を選びましょう(出典: 国土地理院)。経路は浸水想定区域・崖・川沿い・アンダーパス(地下の通路)を避け、できれば昼夜・晴雨で実際に歩いて危険箇所を確かめます。「警戒レベルがいくつになったら、どの道で、どこへ向かうか」を家族で共有し、はぐれたときの集合場所と連絡方法(災害用伝言ダイヤル171 など)も決めておきます。
チェックリスト(保存・印刷可)
- ☐ ハザードマップポータルサイトで自宅の住所を確認した(重ねる/わがまち)
- ☐ 自宅の浸水の深さ(何メートルまで)と垂直避難で足りるかを確認した
- ☐ 自宅・周辺が土砂災害のリスク区域に入っていないか確認した
- ☐ 地形分類などで揺れやすさ・液状化の手がかりを確認した
- ☐ 災害種別ごとに「指定緊急避難場所」を選んだ(指定避難所と区別した)
- ☐ 避難経路を実際に歩き、危険箇所(川沿い・アンダーパス等)を避けて決めた
- ☐ 「警戒レベルいくつで・どこへ・どの道で逃げるか」を家族で共有した
対象別ワンポイント
- 子育て世帯: 子連れの避難は時間がかかるため警戒レベル3で動く前提で、ベビーカーが通れるか・段差はないかも含めて経路を下見しましょう。子どもにも避難先と「逃げるときの約束」を年齢に合わせて伝えておくと安心です。
- 高齢者: 警戒レベル3で動く前提で、徒歩・つえ・車いすでの所要時間で経路を考え、坂や階段、夜間の見えにくさを確認します。家族や近所と「誰が声をかけるか」を決めておきましょう。
- 単身者: 一人だと避難の判断が遅れがちです。スマホにポータルサイトと自治体の防災情報をブックマークし、警戒レベル4までに避難を終えるルールを決めておきます。安否を知らせる連絡先を1つ決めておくと周囲も動きやすくなります。
地域レイヤー補足
ここでは全国共通の見方を扱いました。都市直下型地震が想定される地域では揺れやすさ・液状化と出火・建物倒壊の確認が、南海トラフ地震が懸念される沿岸地域では津波の浸水想定と高台への避難経路の確認が特に重要です。地域固有のリスクは「自分のまち」のハザードマップで確認し、避難計画に反映してください。
まとめ
ハザードマップの活用は、(1) 入手、(2) 浸水を確認、(3) 土砂を確認、(4) 揺れやすさ・地形を確認、(5) 災害種別ごとに避難先と経路を決める、の手順で進められます。色を見るだけで終わらせず、「自分はどうなったら・どこへ・どの道で逃げるか」を決めるところまでが目的です。今日はまず、自宅の住所を入力してみるところから始めましょう。
次のアクション: 家庭の避難計画(マイ・タイムライン)の作り方を参考に、今週中に自宅の避難先と経路を1つ決めて、家族に共有しましょう。
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出典
- 国土交通省 ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ/わがまちハザードマップ)(公表: 2025-03 / 最終確認: 2026-06-16) — https://disaportal.gsi.go.jp/
- 国土地理院 指定緊急避難場所・指定避難所データ(公表: 2024-06 / 最終確認: 2026-06-16) — https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/hinanbasho.html
- 内閣府 避難情報に関するガイドライン(公表: 2026-03 / 最終確認: 2026-06-16) — https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/
