はじめに
登山中に気になるのが、クマなど野生動物との遭遇です。この記事は、環境省の資料でクマによる人身被害の現状を確認し、「出会わないための行動」と「出会ってしまったときの行動」の全体像を示す入口の記事です。具体的な手順は姉妹記事にまとめています。
基準: 出発前に行き先の都道府県のクマ出没情報を確かめ、山でクマの糞や足跡などの痕跡を見つけたら、その先には行かず引き返す
クマによる人身被害の現状
環境省「クマ対策について(資料5)」は、令和7年度のクマによる被害が過去最多だとしています。
資料5が令和8年2月2日時点で環境省が把握している数字として挙げているのは、令和7年度の人身被害件数(214件)・人身被害者数(236人)・死者数(13人)です。資料5の令和7年度の表は4月~12月の集計です。
環境省「クマ類による人身被害について(速報値)」によれば、人身被害の数値は都道府県から聞き取った速報値で、暫定値のため変更することがあります。この速報値の資料の日付は令和8年9月9日で、資料5より後の集計です。最新の値は速報値の資料で確認してください。
死亡事故の事例
資料5には、令和7年度のクマによる死亡事故概要(令和8年2月2日現在)がまとめられています。事例には、羅臼岳登山中にヒグマに襲われた事例、新聞配達中にヒグマに襲われ亡くなった事例、4人でキノコ採り中に襲われた事例が挙げられています。複数人で行動していても襲われた事例があります。
備えの全体像:出会わないための行動と、遭遇時の行動
クマへの備えは「出会わないための行動」と「出会ってしまったときの行動」に分かれます。詳しい手順はそれぞれの記事にまとめています。
出会わないための行動
要点は、出発前に出没情報を確かめること、山では音で存在を知らせること、見通しの悪い場所や単独行動に注意すること、食べ物とゴミの管理、痕跡を見つけたら引き返すことです。出没情報の確認先を含む具体的な方法は、姉妹記事「クマに出会わないための備え|音・時間帯・痕跡・食べ物管理で山のリスクを減らす」にまとめています。
出会ってしまったときの行動
備えていても、クマに出会ってしまうことはあります。距離や状況に応じた行動、子グマを見たときの注意、クマ撃退スプレーの携行・使用の注意は、姉妹記事「クマに出会ってしまったときの行動|距離別の対応とクマ撃退スプレーの携行・使用の注意」にまとめています。
装備リスト
必携装備
- 音の出るもの(クマ鈴・携帯ラジオなど)とクマ撃退スプレー: 携行と使い方の注意は上の姉妹記事で確認してください
- 地図・コンパスと登山届: 下の「地図・登山届」を確認してください
季節・ルートで追加する装備
- マダニへの備え: マダニは春から秋にかけて活動が盛んで、刺される危険性が高まります。草むらや藪など、マダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボンや首にタオルを巻くなど、肌の露出を少なくすることが大事です。服は、目視で確認しやすい明るい色のものがお薦めです。
- ハチへの備え: スズメバチは夏〜10月いっぱいまで活発に活動しています。できるだけ黒い服装でハチのいそうな山歩きに行かないようにしてください。
- 受診の目安: 吸血中のマダニに気付いたら、無理に引き抜かず、医療機関(皮膚科)で処置を受けてください。マダニに刺された後、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱等の症状が認められた場合は医療機関で診察を受けてください。ハチに刺されたらすぐに病院に行ってください。出典は厚生労働省「ダニ媒介感染症」と環境省 中国四国環境局「【注意】 スズメバチ!!」です。
リスクと備え
痕跡を見つけたときの対応は上の基準のとおりです。クマに襲われるなどしてけがをした、あるいは体調不良になったときは、無理をせず活動をやめ、「山での事故・遭難時の救助要請」の手順に従ってください(応急処置の手順はこの記事の範囲外です)。
地図・登山届
警察庁「令和7年における山岳遭難の概況等」は、登山者に次を求めています。
- 地図の見方やコンパスの活用方法を習得し、登山には地図やコンパス等を携行して、常に自分の位置を確認するよう心掛ける
- 登山計画書・登山届は、家族や職場等と共有しておくことにより、万一の場合の素早い捜索救助の手掛かりとなるほか、計画に不備がないか事前に確認するものであることを認識する
埼玉県警察「登山届の提出」によれば、登山届は、山岳遭難が発生したときに、警察による捜索・救助活動を行うための手掛かりとして活用するものです。書き方・提出先は「登山届(登山計画書)の書き方と提出先」で確認してください。
チェックリスト(保存・印刷可)
- ☐ 冒頭の基準を守る
- ☐ 出会わないための行動と、出会ってしまったときの行動を姉妹記事で確認した
- ☐ 草むらや藪に入るときは肌の露出を少なくし、黒い服装でハチのいそうな山歩きに行かない
- ☐ 登山届を提出し、家族・職場に共有した
- ☐ けが・体調不良のときの救助要請先を確認した
よくある失敗と対策
- クマは登山中だけの問題だと思い込んでしまう: 環境省の資料は、新聞配達中やキノコ採り中の死亡事故も示しています。行き先の出没情報の確認を、上の基準のとおり徹底する
- 痕跡を見ても「大丈夫だろう」と先へ進んでしまう: 上の基準のとおり、その先には行かず引き返す
- ハチ・マダニへの備えを後回しにしてしまう: 草むらや藪に入るときは肌の露出を少なくし、黒い服装でハチのいそうな山歩きに行かない
まとめ
環境省の資料によれば、令和7年度のクマによる被害は過去最多で、人身被害の数値は暫定値のため、変更されることがあります。上の基準を守り、出会わないための行動と遭遇時の行動を姉妹記事で確認してから山に向かってください。
次の一歩: まずは「クマに出会わないための備え|音・時間帯・痕跡・食べ物管理で山のリスクを減らす」で、出発前の出没情報の確認方法と山での行動を確認しましょう。
関連記事
- クマに出会わないための備え|音・時間帯・痕跡・食べ物管理で山のリスクを減らす
- クマに出会ってしまったときの行動|距離別の対応とクマ撃退スプレーの携行・使用の注意
- 登山届(登山計画書)の書き方と提出先
- 山での事故・遭難時の救助要請
出典
- クマ類による人身被害について(速報値)(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)
- クマ対策について(資料5)(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)
- ダニ媒介感染症(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)
- 【注意】 スズメバチ!!(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)
- 埼玉県警察 登山届の提出(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)
- 警察庁生活安全局生活安全企画課「令和7年における山岳遭難の概況等」(参照: 2026-09 / 最終確認: 2026-09-27)

